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井上尚弥の「(拓真は那須川天心に)絶対勝てる」の言葉に偽りはないのか

 

WBC世界バンタム級王座決定戦で那須川天心と井上拓真が激突(写真・山口裕朗)

 だが、2位に拓真が浮上した時点で、「やっと世間に響くカードができる。強い奴に勝ってこそのベルトの価値」と、天心が言うようなアンチが文句のつけようがないカードの実現に方向転換。WBCからの指令もあり帝拳サイドから大橋会長に対戦オファーが届いた。  拓真陣営で再考することになったが、井上尚弥が「拓真を天心選手とやらせてください。そっちの方がモチベーションも上がるし、どうしてもやりたい。絶対に勝つからやらせてください」と直訴。  大橋会長は「本人たちがどうしてもやりたいということで決めました。そう言ってくるだろうなとは思っていた」と、このビッグカードを受け入れることを決断した。  会見では、拓真も「絶対勝てるぞという言葉をもらった」と、兄から受けとったメッセージを紹介していた。  モンスターの「絶対に勝てる」の言葉に偽りはないのか。  試合は、天心の「スピードと出入り」vs拓真の「キャリアと総合力」の勝負になるだろう。 「お互いスピードがあるが、ボクシングを長くやっている総合力でしっかりと勝ちにいきたい。技術戦になるだろうが、自分の総合力を当てていけば、攻略できる。そこで上回っていける。KOでも判定でもどっちでもいい」  拓真も長所を全面に出して戦う考えだ。 「兄の試合をお手本にする部分もあるし、刺激になる」  尚弥が14日に最強挑戦者のムロジョン・アフマダリエフウズベキスタン)に判定勝利した「勝ちに徹するボクシング」が参考にもなる。  “参謀”の真吾トレーナーも「天心選手のスタイルはわかっている。どんな形でも対応できるように何パターンも用意していく。技術戦になるでしょうね。ここからマンツーマンでガツンと(調子を)あげていきますよ」との意向を示した。  技術戦を想定する背景には、天心が、自ら告白したパンチ力の「あるなし」問題がかかわっている。  拓真は、「僕もパンチはある方じゃない。ボクシングはパンチ力じゃなくタイミングで倒れることがある。すべてに警戒したい」と言いつつも「(パンチ力が)あるかないかでいえば、みんなが見ている通りだと思う」と厳しく指摘した。  拓真は、昨年10月に堤聖也(角海老宝石)に判定で敗れて王座陥落して以来、約1年ぶりの復帰戦が、即世界戦。堤戦で負った怪我の影響もあり、ブランクを作ったが、「コロナで試合がなかった時もあるし、気にはならない」とマイナス材料とはならないことを強調した。  一方の天心に会見で「井上ファミリーが一致団結して向かってくるが?」と質問した。 「やるのは拓真選手なんで意識はしないですよね。(井上家で)まとめてくるなら、かかってこい、そういう感じ」と逆襲を宣言。空いて席がなかった満員の会見場が思わずどよめいた。 「帝拳には素晴らしいチームがある。この試合が組まれたということはオレが勝つということ」とチーム帝拳の結束を強調した。

 そして「1ラウンドからいきます」と意外な戦術を明かした。  KOか?判定か?の問いには「どっちが見たいですか?」と逆質問。 「どうなるかわからない。当日の運に任せる。そこまで自分をどう高められるか」と、アンサーをしなかったが、囲み会見では「バチっと決まればすぐに終わる。誰もKOを予想していないでしょう」と不敵に言い、パンチ力の「あるなし」問題についても触れた。 「そこで勝負をしているわけじゃない。パワーをつけるために筋トレをしようなんて考えはない。すべての状態が整ったときにKO、ダウンは生まれる」  会見で天心は「しっかりと自分の幽霊を見せたい」と謎かけのような発言をした。その後、天心は江戸時代の句に由来する「幽霊の正体見たり枯れ尾花」を紹介し「この意味を解釈していただければ理由はわかるんじゃないかな」とニヤついた。  幽霊だと思っていたものが実は枯れたススキだったというもので、「恐れられていたものの実体が実はなんでもないものである」ことの例え。戦前の予想では、WBA世界同級休養王者の堤が、Youtubeの番組で「拓真の有利」を主張するなど、拓真のキャリアを買い、天心不利説が大半を占めるが、それに対する反骨心を表現しているのだろう。 「常識的には、勝てないんじゃないか、難しいんじゃないか、と言われる。ただの常識ではかってもらいたくはない。常識を変える奴は非常識な奴しかいない」  ちなみに音響の関係で拓真は、「幽霊」が「武勇伝」に聞こえていたそうで、「今初めて知った。それはどういう意味かわからない」と受け流していた。  天心は元WBO世界同級王者のジェイソン・モロニー(豪州)戦では、激しく打ち合う姿を見せたが、そのラウンドのポイントはモロニーに取られていた。激闘の展開になれば、拓真のキャリアが上回る。  天心がスピードとセンスを生かしたアウトボクシングで、拓真をいかに空回りさせ、ラウンドを支配するかがポイントになるだろう。粟生隆寛トレーナーも筆者に「中身は言えませんが、勝つためのシナリオは出来上がっている」とコメントした。  どちらにも勝利チャンスがある。勝敗予想は難しいが、天心が8戦目で世界王者となれば“大番狂わせ”と世界では報じられることになる。そういうパワーバランスのもとでのビッグマッチである。  天心は、即完売必至の今回のチケットを手売りする機会を設けたいという。「試合だけではなく自分の生き方を見せていくのがスタンス」。SNSの時代に、直接ファンに気持ちを届けたいのが理由。 「僕が勝った方がボクシング界は面白くなる」の自負がある。  その先に「4つのベルトをまとめ」複数階級を狙う野望もある。  一方の拓真は「もう2敗している。負けてもベルトを失うわけじゃない。 自由にできる。ボクシングに何も怖さがない。この先のことは何も考えていない」と、捨て身の境地。  あと2か月。2人の運命の時計の針が進んでいく。

参照元https://news.yahoo.co.jp/

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