※写真はshutterstockより(ピンズバNEWS)
「え、それって子どもと離れて座る可能性もあるってことですよね……」 そう驚きを隠せないのは、毎年夏と年末に妻と小学生の子ども2人を連れて九州の実家へ帰省する40代会社員だ。 ■【画像】座席はビジネスクラス?俳優・大原優乃が韓国旅行へ 「うちは毎年ANAを利用しているんです。子どもがまだ小さいので、予約したらまず最初にやるのが座席指定でした。家族4人で横並びに座れるかどうかで、移動の負担が全然違いますから」 そんな利用者に衝撃が走ったのが、ANAが導入する国内線の新運賃制度だった。 最も安い「シンプル運賃」では、事前の座席指定ができない。座席が確定するのは出発24時間前のオンラインチェックイン以降となる。 「料金が安くなるのはありがたいです。でも、家族がバラバラになる可能性があるなら話は別です。結局、安心を買うために高い運賃を選ぶしかなくなるんじゃないでしょうか」 SNS上では、《子どもと離れた席になったらどうするの?》《家族旅行では怖くて選べない》《ANAまでLCCみたいになってきた》といった声に加え、《安い運賃を選ぶ人ほど不便になる》《結局、高い運賃を選ばせたいだけでは?》《家族連れには実質値上げじゃないか》など、制度への疑問や不満が相次いでいる。 ANAは、新運賃について「多様なニーズに応えるための運賃体系」と説明している。また、株主総会では、シンプル運賃でも有料で事前座席指定できる仕組みを検討していることも明らかにしている。 これについて先ほどの男性は、「もちろん企業にも事情はあると思います。でも、家族旅行って"座席を選べるかどうか"が前提なんですよ。決してぜいたくではなくて。それがオプション扱いになるなら、安い運賃って本当に安いと言えるのかなって思います」と不満を露わにする。
■「ANAのLCC化」は本当なのか 旅行ジャーナリストが語る“世界の常識”
実際、利用者が違和感を覚えているのは「座席指定が有料になること」そのものではない。長年、 「ANAなら安心して利用できる」というブランドイメージが、少しずつ変わろうとしていることへの戸惑いだ。「ANAもLCCのようになってしまった」と受け止める利用者も少なくない。 しかし、旅行ジャーナリストのシカマアキ氏は「世界基準で見ると、今回の運賃体系は決して珍しいものではない」と話す。 「欧米では最安運賃になると、事前座席指定や受託手荷物が有料、キャンセル時の払い戻し不可といった運賃体系がすでに一般的です。今回のANAの新運賃も、その流れに沿ったものと言えるでしょう」(シカマ氏) 一方で、シカマ氏は「運賃体系だけを見て“ANAがLCC化した”と考えるのは早計だ」とも指摘する。 「レガシーキャリアには、LCCにはない価値があります。ラウンジや優先搭乗などの上級会員サービスに加え、機内サービスや乗り継ぎ時のスルーバゲージなど、フルサービスキャリアならではの強みは依然として残っています」(シカマ氏) では、今回もっとも影響を受けるのは誰なのか。 シカマ氏は、小さな子どもを連れた家族旅行こそ配慮が必要だと話す。 「たとえばJAL系LCCの『ZIPAIR』では、6歳以下の子どもと同伴者1人は無料で隣席を指定できます。アメリカでも12〜13歳以下の子どもは家族と隣席になるよう航空会社へ義務付ける制度があります。小さな子どもと親が離れて座ることは、座席トラブルや出発遅延にもつながりかねません。子育て世帯への一定の配慮は必要だと思います」 つまり、海外でも「家族が隣に座れること」は、安全面も含めて特別なサービスではなく、最低限の配慮として扱われているケースが少なくないということだ。 ANAは株主総会で、シンプル運賃でも有料で事前座席指定などの付帯サービスを利用できる仕組みの導入を検討していることを明らかにしているおり、シカマ氏も、「利用者にとっても航空会社にとっても、その形が最も現実的ではないか」と見る。 「LCCのように事前座席指定を有料オプションにするのが、一番分かりやすい落としどころでしょう。利用者も選択しやすく、航空会社側も案内がシンプルになります」(シカマ氏) もっとも、日本で今回のような制度がすぐに広がるとは考えにくいという。 「海外では一般的な運賃体系ですが、日本では『LCC以外はフルサービス』というイメージが根強くあります。JALやスカイマークなどがすぐ追随する可能性は高くないでしょう。ただ、長い目で見れば、世界の流れに近づいていく可能性はあると思います」(シカマ氏) 日本ではまだ戸惑いの声が根強い今回の新運賃制度。世界ではすでに一般化しているサービス設計でもある。しかし「世界標準だから正しい」だけでいいのか。 ニーズに応えるか、それとも「ANAだから選ぶ」というブランド価値を守るのか——。ANAは今、岐路に立たされている。
参照元:https://news.yahoo.co.jp/
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