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アンソロピック、AIチップの自社設計チーム発足

gguy - stock.adobe.com

 

Anthropic(アンソロピック)は、半導体設計を実際に量産まで漕ぎ着けた経験を持つ人材を採用している。求人情報の給与は32万〜48万5000ドル(約7650万円)で、職務内容の説明に美辞麗句はない。「シリコンを量産まで導いた経験があり、スケジュールに対して現実的な感覚を持ち、大組織の後ろ盾なく重要な判断を下すことに慣れている人向けの役職である」。同社は米国時間8月5日、この求人が示唆していた内容、すなわちClaude(クロード)向けのチップを設計する自社カスタムシリコンチームを構築中であることを認めた

 

これで顔ぶれは揃った。グーグルにはTPU、アマゾンにはTrainiumとInferentia、OpenAIにはブロードコム製の推論プロセッサーがあり、メタとマイクロソフトも独自のシリコン計画を進めている。独自チップを持たない最後の主要AI開発企業が、今採用を始めた。広く流通する解釈は、各研究所がエヌビディア依存から脱却しつつあるというものだろう。だが、Anthropic自身が示した計画の中身は、まったく別の場所を指し示している。

Claudeとチップを一体で設計、製造まで進むかは明かさず

掲げられた目標は「共同設計(コデザイン)」だ。チップとAIモデルを一緒に作り込み、両者が互いを形作るようにする。広報担当者は「ユーザーが必要とする規模で、Claudeがより速く、より効率的に動作するようにする」ためだと説明した。アップルはMシリーズでこの手法を用い、グーグルはTPUで採用した。これが機能するのには明確な理由がある。あらかじめ分かっている単一の処理内容に合わせて作られたハードウェアは、その処理が決して要求しない機能をすべて省けるからだ。

Anthropicは、何を変えないのかについても同じくらい明確に語っている。同社はAWS、グーグル、エヌビディア、AMDにまたがるマルチチップ方針を維持すると表明した。完成品をいつ投入するかは示さず、そもそも製造を行う計画があるかどうかも明かさなかった。カスタムチップの可能性を巡るサムスンとの協議は7月に報じられたが、製造契約として確認されてはいない。

 

つまり今回の発表は、設計思想に付随した採用計画である。既存のサプライチェーンとの決別を示すはずの要素は、文中のどこにも見当たらない。

カスタムTPUはすでに、グーグルとブロードコムから買っている

Anthropicは、自社チームができるのを待ってカスタムチップを手にしたわけではない。同社は4月、グーグルおよびブロードコムとの提携を拡大し、2027年以降に稼働する次世代TPUを約3.5ギガワット分確保した。これは2025年10月に締結したグーグル・クラウドとの契約に基づき、2026年中に稼働する1ギガワット超へ2026年に到着する1ギガワットに上乗せされる。

 

ここで押さえておくべきはブロードコムの役割だ。同社はカスタムTPUを開発・供給しており、グーグルの次世代AIラック内部で用いられるネットワーキングやその他の部品について、2031年まで及ぶ別枠の供給契約も持っている。3.5ギガワットといえば、中規模都市の電力消費量にほぼ相当する。それが一企業のAIモデルを動かすためだけに割り当てられる。

AnthropicのCFO、クリシュナ・ラオは、この契約を、「顧客基盤で目の当たりにしてきた指数関数的な成長」に応えるための、同社として過去最大のコンピューティング投資だと述べた。その成長は本物だ。Anthropicのランレート売上高(年換算収益)は、2025年末時点の約90億ドル(約1兆4220億円)から300億ドル(約4兆7400億円)超へ跳ね上がり、年間100万ドル(約1億5800万円)超を支出する法人顧客は1000社を超えた。1年で売上を3倍にしたからこそ、チップ計画の検討が初めて現実味を帯びる。

Anthropicはこの1年、カスタムシリコンを買い続けてきた。売り手がブロードコムとグーグルだったというだけの話だ。

 

トークン単価を下げた効果は、全処理に複利で効き続ける

AI開発企業を自社チップ設計へと駆り立てる圧力の正体は、単純な掛け算だ。ランレート売上高300億ドル(約4兆7300億円)のAI開発企業は毎日途方もない数のトークンを処理しており、その1個あたりコストは、自社が支配していないハードウェアによって決まる。このコストを削ることは、技術部門が取り組めるほぼどんな仕事よりも価値が大きい。削減効果はすべての処理に永久に乗り続け、利用量とともに複利で膨らんでいくからだ。

汎用アクセラレータはあらゆる処理を実行できるように作られている。裏を返せば、特定企業のAIモデルが決して呼び出さない処理に備えた回路面積まで抱え込んでいるということだ。単一のモデルファミリー向けに設計された部品なら、その無駄を省ける。難点は、先端チップ計画には数億ドル(数百億円)規模の費用と数年の歳月がかかり、しかもハードウェアが追いつくまで、AIモデルのアーキテクチャが十分に安定していなければならないことだ。この道を進むのが、設計費を償却できるだけの収益と、狙いを定められるほど安定したモデル系列を併せ持つ企業に限られる理由が、ここにある。

自社チップでも、資金はブロードコムとTSMCへ流れる

いわゆる「エヌビディアからの脱却」という枠組みが見落としていることがある。自社チップを設計するAI開発企業は、業界のチップ層から支出を引きあげるわけではない。同じ層の内側で支出を再分配するだけだ。

 

設計は、ASIC(特定用途向け半導体)の専門知識を持つ誰かによって物理的な部品へと落とし込まれる必要がある。まさに、ブロードコムが積み上げてきた事業そのものだ。アクセラレータ・クラスターを統括するCPUは、CPUはArm系アーキテクチャーで動く比率が高まっており、Armは今や、他社の設計に対してロイヤリティを徴収するのではなく、完成したプロセッサをハイパースケーラーに販売している。

チップ群は高速スイッチング機器で束ねる必要がある。そして最後は、すべてがTSMCで製造される。どのAI開発企業がどんなカスタムシリコン計画を立ち上げようと、チップの設計・接続・製造を生業とする同じ数社を必ず経由するのだ。

アマゾンとグーグルは何年も前に信頼に足るアクセラレータを構築したが、それでもエヌビディア製品を買い続けてきた。この地位を支えているのは、業界全体がすでに書き慣れているソフトウェアと、数万個のチップを1台のマシンのように振る舞わせる相互接続技術だ。その下には、CUDAを標準として扱う既存ユーザー基盤が横たわっている。Anthropicが自社チップチームの発表と同時に、今後も使い続ける調達先としてエヌビディアの名を挙げたことこそ、今回の発表で最も雄弁な細部である。。

 

AI開発企業によるカスタムシリコンは、トークン価格に照準を合わせたコスト削減策だ。業界のコンピューティング能力は、依然として昨年と同じ供給元からやって来る。

これを決着させる要素は具体的だ。Anthropicが実際に自社チップの設計を完成させ、製造工程へ回す日が来るのか。サムスンや他社が最終的に製造するのか。2027年に届くTPU容量が、Anthropicのトークン単価をどう動かすのか。それが判明するまでAnthropicは、財務が許し、成長が求めることをやり続ける。すなわち、売ってくれる相手全員からコンピューティング能力を買いながら、いずれ買う量を減らす手助けとなる人材を雇うのである。

AIインフラ増強は、「チップの外部調達から脱却する企業」を報じるニュースを生み続けている。それでも資金は、変わらず既存の半導体企業へ流れ込み続けている。

参照元:https://forbesjapan.com/

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