最新バージョンの「AIワークスペース 6.0」が発表された。共同創業者兼CEOのエリック・ジン氏が詳細を説明した
2023年12月に米カリフォルニア州で設立されたITベンチャーのMainFunc(メインファンク)は、生成AIの新興企業の中でも異例の速度で成長してきた。マイクロソフトやグーグル、百度などの出身者が創業し、当初は検索AIサービスとしてGensparkを立ち上げたが、その後は時代のニーズに合わせて、AIが自律的に業務を実行し成果物を作成する統合ワークスペースへと提供価値を移行してきた。
最新のGensparkはレポート系のドキュメント、プレゼンテーション用のスライドやグラフ、ウェブサイト、動画などを自然言語によるプロンプトから作成する「オールインワンAIワークスペース」を標榜する。中核となるインテリジェンスエンジンの「Super Agent」は、70種類以上のAIモデルや各種ツール、外部データを組み合わせ、ユーザーからのリクエストの内容に応じてタスクを分解し、適切なモデルを選びながら実行する。
特定の基盤AIモデルを提供する企業のサービスとは異なり、Gensparkは複数の外部AIモデルを制御する構造を持っている。調査、推論、画像理解、コーディングなどモデルごとの強みを使い分け、最終的な成果物までをひとつのプラットフォーム上で仕上げる。この設計により、利用者はモデルの違いを意識したり、複雑なプロンプトを入力することなく、AIに通常の言葉で話しかけるようにタスクを指示できる。
「SecondBrain」が仕事の文脈を蓄積していく
7月21日に東京都内で開かれた記者会見には、共同創業者兼CEOのエリック・ジン氏、共同創業者兼CTOのカイ・ジュー氏、共同創業者兼COOのウェン・サン氏、CRO(チーフ・レベニュー・オフィサー)のジェイミソン・パウェル氏が登壇した。ここで発表されたGensparkの最新ツール群「AIワークスペース 6.0」では、オールインワンのAIワークスペースという概念をさらにブラッシュアップしている。
最新バージョンにおいて、重要な進化のひとつがクラウドメモリー機能の「SecondBrain(セカンドブレイン)」だ。ユーザーのメール、カレンダー、各種ドキュメント、議事録、社内データベースにCRMなど、ローカルとクラウドをまたいで様々な場所に散在する情報を継続的な文脈(コンテクスト)に則した形で蓄積する。ユーザーがGensparkで仕事を進めるほど、AIがユーザーのことを深く理解し、ユーザーの期待に近いアウトプットを提供するようになる。
ジェイミソン・パウェル氏が、日本にもGensparkの導入企業が拡大していることをアピールした ジン氏は会見の壇上で、同社のビジョンは「とてもシンプルに、かつ自然に仕事がはかどる状況をつくること」と説明した。チャットで壁打ちをしたり、あるいはメールや企画書を書いてもらうだけでなく、情報収集から判断材料の整理、様々なフォーマットの成果物を作成してくれる“スーパーエージェント”として生成AIを活躍させるという発想だ。
この日の記者会見ではGenspark「AIワークスペース 6.0」に関連するアップデートのほかに、同社初のハードウェア商品となる「SecondBrain Note」も発表した。
極薄サイズのカード型AIボイスレコーダーは、最大約35時間の録音に対応する。会議やインタビューの会話を記録し、文字起こしや要約を行うだけならば先行する競合他社製品も少なくない。
同社があえてこのタイミングでAIボイスレコーダーを開発する狙いについて、ジン氏は録音後のファイルをGensparkと連動させて、文字起こしや資料作成などの「続くタスク」とスムーズに連携できることのメリットを説いた。日常的に記録したボイスメモをセカンドブレインに蓄積すれば、AIによるコンテクスト解析はさらに賢さを増していく。
「私たちはAIボイスレコーダーを、様々な仕事の出発点になるデバイスに位置付けています。記録した会話をコンテクストと一緒にワークスペースに取り込み、より完成度の高いドキュメント作成に活かすことができるはずです」(ジン氏)
これまではデジタル空間に存在していたAIエージェントを、小型のハードウェアに載せることでAIを現実世界の会話に接続する、新たな試みでもある。
共同創業者兼CTOのカイ・ジュー氏が手に持ち、掲げているカード型のデバイスが「SecondBrain Note」 急成長を支えたボトムアップ型の普及戦略
同社はこれまでに、巨大企業から先にGensparkを売り込み、採用事例を増やして一気にトップダウン方式で裾野を広げるアプローチは採らなかった。反対に、個人利用から自然発生的に社内利用や連携利用へと広がりが生まれてきたことで、ユーザーに寄り添う形でビジネスを拡大してきた。CROのパウェル氏が、その歩みを振り返った。
「Gensparkは当初から法人向けに販売していたわけではありません。個人のアーリーアダプターが使い始めて、同じ会社の同僚やまわりのビジネスパーソンに利用者が広がっていきました。それ以降、満を持してビジネスプランの提供を開始しました」(パウェル氏)
2025年春にAI Workspaceとして展開を開始後、約9カ月(2026年1月時点)で年換算経常収益(ARR)が1億ドルを突破。さらに3カ月で2億5000万ドル規模に達したと、同社のサン氏が説明する。法人向け「Genspark for Business」は展開から8か月で7000社以上のクライアントを獲得し、企業価値は26億ドル規模へ到達。採用する企業の業種もまた広告、通信、製薬、小売、コンサルティングなど幅広い。
この広がりをもたらしたものが、「AIに詳しくない人でも使える」ことを売りにしたGensparkのユニバーサルな設計思想だ。サン氏は「ユーザーはAIに詳しい層だけではありません。AIモデルの違いやオーケストレーションを理解する必要もなく、誰でも簡単に使いこなせることがGensparkの搭載ツールの特徴」と説く。
Gensparkのグローバル戦略と、日本市場へのアプローチを語る共同創業者兼COOのウェン・サン氏 個人や小規模事業者にとっては、Gensparkを導入することが1人で多数の業務を担う際のリソース不足を補うための打開策にもなる。一方、大企業においても日々大量に生まれる議事録や、その他のドキュメントを「組織の集合知」として集約し、自動化された業務フローに転換できる可能性が生まれる。
最新のAIワークスペース 6.0においても、多くの処理が効率性に優れたモデルを用い、複雑な推論や高い精度が求められる処理にはより高性能なモデルを割り当てるという、従来の設計思想が活きている。品質とコストの両立を図ることにも腐心してきた。
複数のエージェントによる回答の相互検証に加え、検索ツールや信頼性を確認したデータセットを活用することで、ハルシネーションの抑制と回答精度の向上も目指す。ジュー氏によると、エージェントの実行過程についても別のLLMが各処理を評価し、その結果をモデルの選択やシステムの改善に反映する仕組みを採用しているという。さらにプロンプトインジェクションへの対策として、独自のガードレールによる検知機能を実装している。最新のフロンティアモデル自体も攻撃への耐性を高めており、複数の対策を組み合わせることでリスクを極小化しているのだと、ジュー氏は説明を加えた。
日本市場に3年間で1億ドルを投資
同社は2026年1月、東京に日本法人とオフィスを構えた。製品・営業・技術支援などチームは全方位に拡大を続けている。日本は同社の成長戦略における大事な市場のひとつに位置付けられている。サン氏は、今後3年間でさらにマーケティングの強化と、企業のAI導入支援を加速させるため、日本国内でさらに1億ドル(約164億円)を投資することも記者会見の場で表明した。
日本市場に定着するため、さらに積極的な投資に力を入れていく サン氏はまた、日本企業からの要望に応える形で、エンタープライズ向けのプランを契約するクライアントに向けて、国内でデータを保管するデータレジデンシーへの対応も進める方針を示した。ローカルサポートについても、コンサルティングからテクニカルソリューション、カスタマーサクセスまで国内で行う体制を強化する。
「最先端のAIは、誰にとっても簡単に使えるものであるべきだ」と同社のキーパーソンは口を揃えて強調する。そして今後も世界に10億人以上存在するナレッジワーカーのために、AIエージェントを構築することをGensparkのミッションとして掲げた。
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