いよいよ2022年が始まった。今年の干支は、「トラ」。ライオンと並び、肉食獣の代表格というイメージがある。
しかし実は、そんなたくましく勇猛なイメージとは真逆の、「意外な習性」があると聞いたことはないだろうか。
それは
「トラは笑っちゃうほど狩りがヘタ」「トラは泳ぎが得意」のふたつ。Jタウンネット記者はこれらウワサについて、はたして本当なのか動物園の飼育員に聞いてみることにした。
2021年12月18日に東武動物公園(埼玉県南埼玉郡)を取材したところ、飼育課長の下康弘(しも・やすひろ)さんが、それぞれの真実を教えてくれた。
成功率は約10パーセント1,「トラは笑っちゃうほど狩りがヘタ」
生き物たちの、ちょっと残念で愛らしい生態を紹介する「ざんねんないきもの」シリーズの「続ざんねんないきもの事典 おもしろい!進化のふしぎ」(高橋書店)の中には、「トラは笑っちゃうほど狩りがヘタ」という項目がある。
「トラの場合は、単独で狩りを行い、足もあまり速くないため、えものをつかまえられる確率はたったの10%ほどしかありません。しかも、狩りのチャンスは1日せいぜい1~2回。(中略)勝利の女神が全力でほほえんでも失敗するほど狩りがヘタなのです」(「続ざんねんないきもの事典 おもしろい!進化のふしぎ」(高橋書店)より)なんと、トラの狩りでの成功率は10パーセントほどとのこと。遭遇したら絶対に死ぬ!というイメージがあったが、そういうわけではないのかもしれない。
下さんは、この意外なトラの側面について、次のように説明した。
「トラの獲物は、水牛、シカ、イノシシ、クマ、サル類、クジャク、ワニ、ヘビ、カエル、魚類、昆虫など様々です。トラは単独で狩りを行うため、大型動物に対する成功率は高くないと思われますが、小型動物や昆虫などは簡単に捕らえるでしょう」「動物を倒すパワーやテクニックが他の肉食獣に比べ劣っているとはとても思えませんが、成功率が10%前後という数字だけを見ると上手とは言えないかもしれません」なお、「続ざんねんないきもの事典」には、他の肉食動物の狩りについても、
「最速のハンターであるチーターで40~50%、むれで狩りをするライオンでも20~30%と、それほど高くない」と、説明されている。
自然界は想像以上に厳しそうだ......。
実は泳ぎが得意なネコ科の動物たち
2,トラは泳ぎが得意
知識検索サービス「YAHOO!知恵袋」には、2015年にこんな質問が投稿されている。
Q:ライオンやトラは泳げるのですか?A: 泳げますよ。両方泳げますけど、ライオンは水に入るのを嫌うのにたいして、トラは泳ぐのが大好きです。※投稿文より一部抜粋。トラは泳ぐのが大好き!? なんとなく、ネコ科の動物は水が嫌いなイメージがあるが......。
下さんに尋ねると、次のような回答があった。
「ネコ科動物の中で積極的に水に入ったり泳ぐのが得意なのは、トラ、ジャガー、スナドリネコです。ライオンやチーターは水辺に行って飲水はしますが、まず水には入りません」
ネコ科の中でも、泳ぐのが得意な種とそうでない種がいるということか。
トラたちが伝えてくるメッセージ3,「フフフン! フフフン!」
獰猛な肉食獣のイメージから一転、急にかわいく思えてきたトラくん。もっとその素顔を知りたくなり、下さんに、他にも一般的なイメージとはかけ離れた特徴はないか聞いてみた。
「トラは信頼の証として、『私はあなたとお友達ですよ』というメッセージを、鼻を鳴らして『フフフン! フフフン!』と発します。これはライオンやヒョウ、チーターには見られない現象です」(下さん)トラくん......!!!
そんなかわいい姿は、見たことがない。ゴキゲンな鼻歌のような感じだろうか。トラくんと仲良くなったらぜひ聞いてみたいものだ。
トラの意外な習性を3つ見てきたが、既に知っているものはあっただろうか。肉食獣なのに狩りが下手だったり、ネコ科なのに泳ぎが得意だったり......そのギャップにメロメロになってしまった人もいるかもしれない。
トラ年の始まりを機に、動物園に足を運んで普段の姿をじっくり観察してみては。