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月は今、恐怖で青ざめているかもしれない。7年前に打ち上げられたスペースXのロケット「ファルコン9(v1.1)」が、月に向かって猛スピードで突進しているからだ。
地球近傍天体を追跡するソフトウェアの開発者によると、ファルコン9は2022年3月4日午後9時25分(日本時間)に時速9300キロの猛スピードで月の裏側に衝突すると予測されるそうだ。
・ファルコン9のロケット上段が月衝突ルートに突入
ファルコン9 (v1.1) は2015年2月に、NASAとアメリカ海洋大気庁が運用する気候観測衛星「ディープ・スペース・クライメイト・オブザーバトリー」を宇宙へ運ぶために打ち上げられた。[画像を見る]
ファルコン9 (v1.1)
人工衛星は無事、地上から150万キロ離れた地球と太陽のラグランジュ点に設置された。
が、ミッションを終えた重さ4.4トンのロケット上段部は燃料を使い果たし、そのまま予測不能な軌道に突入。以来、地球と月の周囲を暴走していたのだった。
それが今、月に衝突するルートに乗ってしまった。このことはハーバード大学の天体物理学者ジョナサン・マクドウェル氏も、自身のTwitterで認めている。 ・月の裏側に赤道付近に落下予定
ソフトウェアの開発者で、衝突を予測したビル・グレイ氏によると、ロケットは月の裏側の赤道付近に落下するという。つまり決定的瞬間を目撃することはできないかもしれない。
だが、軌道が変化する可能性はある。今回の数理モデルは、地球・月・太陽などの天体の挙動や、その重力の影響などはほぼ完全に捉えていると、グレイ氏は説明する。
しかし太陽光から受ける圧力を完璧に予測することは難しいのだという。それはロケットをただ太陽から押しのけるだけでなく、横に反射するのだ。そのためにロケットの軌道は少々トリッキーなものになる。
仮にNASAの「ルナー・リコネサンス・オービター」やインドの「チャンドラヤーン2号」で、衝突の痕跡や決定的瞬間を観察しようというのなら、その正確な位置を予測することが不可欠だ。
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・月にロケットが衝突するのがこれが初めてではない
ちなみに月にロケットが衝突するのは今回が初めてではない。
2009年には、NASAが無人探査機「エルクロス」を月に向けて発射。まず最初にロケットブースター「セントール」が時速10000キロで月面に衝突し、次いでエルクロスもまた月面に突っ込んだ。
じつはこれ、衝突で巻き上がる塵を調査するためのミッションで、この分析によって月に水があることが明らかになっている。
なおファルコン9の衝突だが、先程のマクドウェル氏のツイートによると、「興味深いが、大した問題ではない」とのことだ。どうやら木っ端微塵になって、月の兄弟が増える心配はしなくていいらしい。
とは言え将来的に月に移住なんてことも考えられているわけだから、なるべく月にダメージを与えないでほしいし、何者かが住んでいたとしたらご立腹じゃない?