日々の生活で、こんな経験はないだろうか?
・家族に「テレビの音量が大きすぎる」と注意されることがある。
・飲みに行くと、ガヤガヤとうるさい店内では、話が聞きづらい。
・人の言うことがよく聞こえず、聞き返したり、生返事でごまかすことがある。
実はこれ、すべて「難聴」の典型的な症状なのだ。
「世界的に聴覚障害を抱える人の数は増加傾向で、日本でも軽度を含む難聴者は約2000万人ともいわれています。特に60代後半では3人に1人、75歳以上は約7割が難聴に悩んでいるというデータもあります」(医療関係者)
難聴は、聞こえる音の大きさによって程度が分かれており、「中度難聴」以上になると補聴器の装着が推奨される。
「加齢による聴力の低下は40代から始まります。60歳前後で急激に進行しますが、最初は、あまり自覚がない人がほとんどなんです」(前同)
"年だから、多少聞こえなくなるのもしかたがない"と、諦めてしまう人もいるかもしれない。だが。
「最近は、難聴が認知症の発症要因となることが明らかになっています。軽度で約2倍、重度で約5倍もリスクが増加するとの研究結果もある。年のせいだと放置するのは得策ではありません」(同)
耳から音の情報が入ってこなくなることで、脳の機能が低下。かつ、話が聞き取れないから周囲との交流を避けるようになり、結果、認知症となってしまうのだ。
難聴が高齢者の危険因子である一方、実は治療が非常に難しいのだという。
『耳は1分でよくなる!薬も手術もいらない奇跡の聴力回復法 新装版』(自由国民社)の著書もある、目と耳の専門整体院『日本リバース』院長・今野清志氏は、こう語る。
「外耳道から鼓膜までの音の増幅器官が低下して起こる"伝音性難聴"は治療がしやすく、また補聴器でも対応できます。
でも、鼓膜の奥の内耳から脳につながる部分が機能障害を起こす"感音性難聴"は、治療が困難なため、医師も"年齢のせい"にするしかないのが現状です」(以下発言はすべて今野氏)
■難聴は改善できる
加齢性難聴は後者にあたる。各種検査をしても、耳の構造自体には問題がないため、治療ができないと判断されてしまうのだ。
だが、今野氏は、「難聴は改善できる」と力説する。今野氏が治療のベースとしている「中医学」では、耳の働きが衰える原因として、三つのことが考えられているという。
まずは「血流の悪化」だ。
「血流が悪くなると酸素や栄養が細胞に届きにくくなり、老廃物の処理も滞ります。血流が不足することで、特に栄養が必要な器官の働きが弱まる。その一つが耳というわけですね」
難聴の原因が耳以外にあるとは意外だが、二つめの原因もまさにそう。それは「内臓疾患」だ。
「中医学では、内臓の働きが落ちると耳も悪くなるとされています。実際、研究者の報告でも、糖尿病になると難聴のリスクが3.7倍、腎臓病の場合は5.9倍に高まるというデータもある。内臓の働きが良ければ、耳もよく働くんですよ」
そして三つめは、「自律神経の乱れ」。
「自律神経には、交感神経と副交感神経がありますが、緊張やストレスによって、そのバランスが崩れて、血管を収縮させたり血圧を上昇させたりして、聴力を低下させるというわけです」
体の機能をコントロールする自律神経が異常をきたせば、耳の働きに悪影響を及ぼすのも当然だろう。
今野氏は、この三つを改善することで、聴力回復の施術を行っている。これまで診てきた難聴患者は10万人にも上る。
「つい先日も、静岡から上京した80代の患者さんが"帰り道で駅のアナウンスがよく聞こえて、妻の声も今までより、ずっとクリアです!"と喜んでいました。この患者さんには耳まわりの血流が良くなる施術をしたんですが、血流を良くするだけでも、こんなに早く効果が出るんです」
今野氏によれば、自分でも簡単にできる聴力回復トレーニングがあるという。どれも1分程度でできるので、聴力に不安がある人はもちろん、難聴予備軍の人も、ぜひ試してほしい。