将棋の藤井聡太七冠(20=竜王、名人、叡王、王位、棋王、王将、棋聖)が八冠を獲得した場合の1年間の経済効果について、関西大の宮本勝浩名誉教授は4日、約35億3487万円になるとの試算を発表した。宮本氏は一度に多くの観客を集めるスポーツの試合や歌手のコンサートと比較し「個人プレイヤーとしては空前絶後の経済効果」とコメントした。
宮本氏は、藤井七冠が残り1つの「王座」を獲得し八冠を1年前後保持する前提で試算。計算の基になる直接効果として7項目を挙げた。
【1】基本給、タイトル獲得料・防衛料、対局料などの収入 日本将棋連盟から支払われる基本給とボーナスを1920万円と推定。王座戦の賞金を約700万円、対局料を約500万円とし、8大タイトルの獲得料・防衛料・対局料を合わせて約1億4070万円と算出。
【2】CMなどスポンサー収入 八冠制覇で増加が見込まれ約2億円。
【3】一般棋戦の賞金、イベント参加料、指導対局料などの収入 約5000万円。
【4】本・ゲーム・グッズ販売などの売上額 約3億円と推定。
【5】将棋会館に行くファンの消費額 全国4カ所にある将棋連盟施設の訪問客が年間で合計約3万6千人増加すると推定。「(藤井七冠が食した)『はにたん最中』(1個約280円)があっという間に10万個を売り上げたり、(中略)『いちご大福』(1個約200円)がたった1日で500個を売り上げたりしている」と、飲食店舗の売り上げにも影響、"藤井効果"で増加した訪問者が年間で消費する金額を約6億6744万円と推計。
【6】観光客誘致の売上増加額 約5917万円。
【7】その他の売上増加額 将棋盤や駒の買い替え需要増加など約2億円と算出。直接効果の合計は約16億3651万円とした。
これらに、材料を製造・販売する企業の売り上げ増加などの波及効果を合わせて、藤井八冠が誕生した場合の経済効果を約35億3487万円と見積もった。
宮本氏は「観客数が限られる将棋の世界において、一人の棋士が1年間で約35億3487万円の経済効果を生み出すことは素晴らしい」と総評した。
藤井七冠は先月29日に羽生善治九段(52)を破り、王座戦挑戦者決定トーナメントの決勝進出が決定。次戦に勝利すれば永瀬拓矢王座(30)への挑戦が決まり、今秋にも八冠を制覇する。