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京大教授が懸念。岸田首相「NATO首脳会議」出席が日本を滅ぼしかねない理由

fji20220609

6月下旬に開催予定の北大西洋条約機構NATO)首脳会議に、日本の首相として初めて出席する方向で調整に入ったと伝えられる岸田文雄氏。実現すれば我が国を「パートナー国」と位置づけるNATOからの招待に応える形となりますが、岸田首相の会議出席は日本に何をもたらすことになるのでしょうか。今回のメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』では著者で京都大学大学院教授の藤井さんが、この動きについて「日本を地獄に突き落とすことになる」とし、そう判断せざるを得ない理由を噛み砕いて解説。結果的に中ロを敵に回し、アメリカからは見捨てられることになると強く批判しています。

岸田氏はイメージ対策のためだけに何も考えずNATOに参加し、結果的に日本を地獄に突き落とす最低最悪の総理になる

岸田総理は、NATO北太平洋条約機構)の首脳会議に出席する見通しとのこと。日本の総理大臣のNATO首脳会議出席は先例がなく、実現すれば初めてのこと。

私はこの一報を耳にしたとき、「こりゃ、この脳天気男、国民やアメリカにエエカッコするアピールのためだけに、日本国を地獄に突き落とした最低最悪の総理だ、ってことになるぞ……」と心底暗澹たる気持ちになりました。

なぜそう思ったのか……できるだけ丁寧に解説したいと思います。

もし仮に日本がロシアを相手に戦争を始めてもいいんだよという覚悟があるなら、(もちろんそんな覚悟なんて持ってもらっちゃ困るのですが、少なくとも“筋”の視点から言えば)それはそれでも構わないのですが、そんな覚悟は岸田には万に一つも有りません。

もちろん日本は、アフガニスタンイラク、オーストラリア、韓国と同じくNATOの「グローバルパートナー」ではあります。ですから、NATOの会合に総理が出る義理が全く無いとは言えません。

しかし、今、NATOは事実上、ロシアと戦闘中。ロシアが直接の戦いを挑んだ相手はウクライナではありますが、“NATO”こそが真の敵だと見なして、この戦いを始めたのです。

ですから今このタイミングでNATO会合に日本の総理として参加するということは、まさに今、戦争をしているロシアとNATOの戦いに我が国日本も参戦するのだというアピールすることになります。

その結果、隣国ロシアは日本を「敵国」と見なす事となります。

これは極めてマズイ外交状況を作り出します。

なぜなら日本がまさに今、「軍事超大国中国との戦争」を、好むと好まざるとに拘わらず始めねばならない状況にあるからです。中国は「尖閣は我が国固有の領土」と主張して憚らないのであり、極めて近い将来、すなわち10年以内、あるいは5年以内に具体的に尖閣を軍事的に略奪しにくる可能性すら考えられる程に、日中関係は今、軍事的緊張状態に置かれているのです。

そんな中で、わざわざロシアを敵に回すのは、アホ中のアホ戦略だ、と言わねばなりません。

そもそも日本は中国との戦いに全力を投入しなければならないのであり、ロシアとの戦いなぞにかまけている暇は本来全く無いのです。

だからロシアと友好国や同盟国になる必要までは無いとしても、少なくとも、日本と中国の戦争がはじまったときに、ロシアが中立を保つくらいの状況を、今から細心の注意を払って作り上げておかねばならない状況にあるのです。

すなわち、日本の長期戦略から言えば、日中戦争が始まった時に、中露が連携せずに、ロシアがその戦いを静観する様に、望むらくはできる限り中国ではなく日本をサポートする状況を、作り上げておくことが、超重要なのです。

それにも拘わらず、今回岸田がNATOの会合に出れば、ロシアは日本を明確な敵国と見なす可能性が非常に高くなる。したがって、日中の戦争が始まった時に、ロシアは、日本ではなく中国を支援する事になるのです。しかも、日本が「敵国」である以上、そのロシアの中国支援は、極めて積極的で明確なものとなるのです。

すなわち、今、ロシアに敵国と認定されるということは、来たるべき「中国との戦争」が「中露同盟との戦争」に転換することを意味するのです!

もちろん、岸田(あるいはそれを支持している議員や国民達)は、今、NATOにでておけば、日中戦争の時に、欧米諸国が日本をサポートしてくれる確率が高くなるだろう、だから、NATOに出ておくのは得策なんだよ、と軽く考えているものと思います。

が、そんな予想は「完全な間違い」です。

NATOは、日中戦争の時に日本を助けには絶対きません。

何といっても、日本にはかの憲法9条がある以上、集団安全保障が十分にできる体制にはないのです。だから、NATO各国が攻められたときに日本が助けに行くことなど土台無理なのであり、そんな事はNATO各国は分かっているのですから、絶対に日本を助けになど来ないのです。

もちろん助けに来る可能性があるのは米国です。日米安保条約があるからです。が、米国が助けに来ることがあったとしても、それは、日本がNATOに協力をしているからということが理由なのではなく、あくまでも日米同盟があるからです。

だから日本は、日中戦争において有利に戦うために必要なのは、NATOへの協力などではないのです。そんな事は、アメリカもよく分かっていますし、これまでの歴代総理もよくよく分かっていたのです。だからこそ、これまでの首相は、日米同盟堅持拡充とは口にするものの、誰一人としてNATOの会合には正式には参加してこなかったのです。

そんなことは、外交を少しでも知ってる者からすれば当然中の当然の話だったのですが、外務大臣を長年勤め上げた筈の岸田はそんな程度の外交的常識すら、あたまの中に入っていなかったわけです。

ホントホンットにアホとしか言いようがありません。

まとめていいますと、次の様な話です。

岸田はナンモ考えてない愚かなペラッペラな政治家けど、空気だけは読むことができるお調子者。

そのお調子者は、今、アメリカやNATO諸国が「ロシアをやっつけろ!」と言っているから、そのノリに乗っかって「私達もロシアをやっつける!」と言い出した。

で、そんなことチョロって言ったら(例えば、8人の外交官追放)、国民ウケもいいし、アメリカウケ、NATOウケも皆良い感じになった。だから、ますます調子にのって「NATOに行きますっ!(キリッ)」なんてついに言い出してしまった。

その結果、ロシアは「日本め、コイツ完全に俺たちの敵になりやがったな」と認識する結果に……ちなみにそれは、プーチンだけの特殊なものでなく、ロシア政府全体の歴史的認識になってしまう……だから、北方領土交渉が全て破談となったことは言うに及ばず、プーチンが失脚しようが何をしようが(ロシアそのものが壊れてしまわない限り)ロシアは日本を「敵国」あるいはそれに準ずる国と規定する事になってしまった。

したがって、近い将来「日中戦争」が実際に生じた場合、日本は中国のみならず、その中国を支援するロシアも同時に相手として戦わないといけないリスクを背負うことになってしまった。

そうして中露がタッグを組めば、それはアメリカにとってますます危険な敵となるが故に、日中戦争勃発時に日本を助けようとするよりもむしろ「見捨てる」見込みが極めて高い水準となってしまう。

そもそも、米国にとってみれば、日本を助けるかどうかは、米国の国益にとってプラスかマイナスかという視点以外は無関係であり、日本がNATOの会議に出席するかしないかなんて、全く関係ない。つまり米国は、「日本はNATOにわざわざ来てくれたんだから、どんな状況でも助けてやんなきゃ」なんて万に一つも思わない。

かくして、岸田が調子ブッコいてアホみたいにロシアの外交官追放したりNATOに行ったりするもんだから、巡り巡って日本は結局、アメリカから見捨てられ中露両国と一人で戦わないといけなくなるリスクがグンと高まり、その結果、日本がズタボロになってしまうリスクがメチャクチャ高まってしまった……。


つまり外交というものは、これまでの歴史と今後の将来をしっかりと見据えた上で、深慮遠謀で戦略的に取り組むべきものであって、その場のノリや空気や人気取りで適当にやっちゃ絶対いけないのですが……、岸田にはそんな深慮遠謀が筈もなく、ただ単に参議院選挙対策や米国にいい顔したいっていうだけの浅はかな思いで、取り返しの付かない事をやってしまっているわけです。

はっきり言って、こういうアホに日本は潰されてしまうのかと思うと、心底悔しく、哀しいとしか言いようがありません……しかも、これからこのアホによってもたらされる巨大破壊がどういうものかを、多くの国民は全く気がついていないのです。

もちろん以上の当方の見通しが全て単なる杞憂であればいいのですが…そうではないリスクが途轍もなく高い、と当方は心底危惧しています。

 

 

参照元:https://www.mag2.com/